問われる日本の外交力
7月の再現でしょうか。
政府は、北朝鮮の核実験を阻止するため、米国、中国、韓国など関係国と連携した外交努力に全力を挙げる方針だ。核実験に踏み切った場合に備え、追加制裁措置も検討する。
また、核実験の兆候を事前に把握するのは難しいとされる中、情報収集も急いでいる。
麻生外相は3日夜、北朝鮮の声明について「声明が出た後、あまり間をおかずに現実になってきた過去の例がある。起こりうる可能性を否定するのは甘すぎる」と記者団に述べ、北朝鮮が核実験を行う可能性があるとの見方を示した。
政府は今後、国際包囲網を強め、北朝鮮に自制を求める方針だ。8、9両日の日中・日韓首脳会談では、主要議題に取り上げ、核実験阻止で中韓両国と足並みをそろえつつ、両国が北朝鮮への働きかけを強めるよう促すことにしている。
対北朝鮮制裁について、政府は、7月の弾道ミサイル発射を受けて、貨客船「万景峰号」の入港禁止や、ミサイル開発などに関与した疑いのある団体を対象とした送金禁止・銀行口座凍結を実施している。今後は、核実験を実施した場合の追加制裁として、貿易の禁止や北朝鮮船舶の全面的入港禁止などを検討する。
北朝鮮の声明の狙いについて、政府は「米国を念頭に置いた典型的な瀬戸際外交だ」(外務省幹部)と受け止めている。ただ、「北朝鮮に厳しい姿勢を示す安倍政権や、安倍首相の中韓歴訪をけん制する狙いもあるのではないか」(外務省筋)との声もある。
政府は、核実験の実施の可能性について、「切迫した状況を示す具体的情報はない」(塩崎官房長官)としている。
ただ、麻生外相は3日夜、「地下核実験はミサイルと違って、いつの時点(でやるの)か、なかなか分析できない」と記者団に語った。7月のミサイル発射時には兆候をつかみ、事前に周到な準備ができたが、核実験への対応はより難しいと認めたものだ。政府内には、北朝鮮が核実験の構えを見せたまま、長期戦になるとの見方もある。
(2006年10月4日2時8分 読売新聞)
なかなか進まない北朝鮮対策について、米国議会が焦れ始めたようです。
【ワシントン2日共同】米上下両院は2日までに、米国の国防予算の執行ルールや防衛政策を決める2007会計年度(06年10月-07年9月)国防権限法案の中に、ブッシュ政権に対し「北朝鮮政策調整官」を新たに任命するよう求める修正条項を盛り込むことで合意した。
北朝鮮の弾道ミサイル発射や核開発の継続という事態の悪化を受け、議会が調整官ポスト新設によって、政権側に「より強靱な北朝鮮政策」(議会スタッフ)への見直しを迫った格好。ブッシュ政権が問題解決の基軸に位置付ける6カ国協議が進展の兆しを見せない中、議会側が不満を表明したといえる。
上下両院の合同協議会が先月29日、民主党提案の修正条項の明記で一致。成立には大統領の署名が必要だが、イラク関連の条項など他の重要案件も含まれており、署名拒否は政治的に難しく成立の公算が大きい。
クリントン政権下の1998年にも議会が同様のポスト設置を勧告した経緯があり、議会スタッフは「98年の政策見直しをモデルにしている」と言明した。
法案によると、大統領は法案成立から60日間で調整官を任命。調整官には(1)省庁間による政策の完全な見直し(2)核、ミサイル問題での交渉方針の提示-などが義務付けられる。任期は最長で2011年末まで。
10/3 10:31 共同通信
中韓が進める「包括的アプローチ」による北朝鮮の6カ国協議再開がこれ以上滞れば、米国と北朝鮮の直接対話もありえます。そうなれば当事者である日本のアジアにおける外交力が問われることとなるでしょう。結果として日本のアジアにおける影響力は著しく低下します。
中国にとっても事実上の保護国である北朝鮮が、米国と協調体制をとる中国を無視して、直接米国と対話を始めることは北朝鮮に対する影響力を疑われる結果となり、この問題に対する発言力が低下します。この点に関していえば、両国の利害関係は一致しています。
問題は韓国です。韓国は制裁決議直後こそ米支援の保留を発表しましたが、その後の制裁は特に検討することなく、この点に関しては中国より消極的です。そればかりではなく、8月の水害時にはすぐさま支援を発表し、金剛山観光や開城工団を通じて北朝鮮への現金流入を助け、孤立を深める金正日政権を資金面で支えています。
また、日米が推し進める金融制裁に対しても、韓国は対案として、中国を巻き込んで事実上の支援策である「包括的アプローチ」を掲げて金融制裁への参加に消極的です。
8、9両日の首脳会談の重要性が増してきました。まずは中国との交渉で、北朝鮮の核実験への動きについて、両国が協力して北朝鮮への圧力を強め、核実験をけん制する姿勢を見せることが重要です。
その後、韓国との首脳会議において、「包括的アプローチ」による6カ国協議復帰再開にある程度は協力する姿勢を見せつつも明確な期限を設け、その後の制裁に韓国の参加を約束させることが重要となってきます。
今回の首脳会談では日本の外交力が問われます。そして今回の日中・韓首脳会談が膠着する状況を動かしたことも事実です。この緊張する北朝鮮問題に関して、「主張する外交」をどう展開するのか。安倍首相と麻生外相の手腕が問われることとなるでしょう。これを好機として一気に交渉を進め、状況の打開をしていただきたいものです。
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